『 トーマの心臓 』

説明

  人間の愛という普遍的なテーマを描いた物語

ある雪の日、シュロッターベッツ・ギムナジウムのアイドルだったトーマ・ヴェルナーが陸橋から転落死する。
シュロッターベッツがトーマの死で騒然となる中、委員長であるユリスモール・バイハン(ユーリ)のもとにトーマからの遺書が届く。
事故死とされていたトーマの死が自殺であること、トーマが死を選んだ理由が自分自身にあることを知り、ユーリはショックを受ける。表向きは平静を装いながらも、トーマの死を利己的な愛の押しつけと感じ、理不尽さと罪責感にさいなまれ苦しむユーリ。そんな彼を同室のオスカー・ライザーは心配そうに見つめる。

数日後、ギムナジウムに転校生のエーリク・フリューリンクがやって来る。彼は亡くなったトーマとそっくりだった。エーリクを見るたびにユーリはトーマと重ねてしまい、怒りや憎しみをあらわにすることすらある。エーリクはそれを迷惑に思うが、同時にユーリの存在が気にかかり、過去にトーマとユーリの間に何があったのか知ろうとする。しかし謎は深まるばかりだった。

そこにエーリクの母の事故死の知らせが入る。悲しみにくれるエーリクをユーリは慰め、これを機会に2人は次第に心を通わせて行く。 後日、エーリクは偶然、図書館でユーリにあてたトーマの詩を見つけ、トーマの死の真相を、そしてトーマのユーリへの深い愛を知る。

エーリクはユーリへの気持ちを深めていくが、ユーリはいよいよ頑なな態度を取るようになる。しかし、ひたすらユーリを愛し信頼を得たいと願うエーリクの言葉から、ユーリは、トーマがユーリの罪を自ら引き受け、贖おうとし、そのために自分の命を代償にしたのだと悟る。トーマはユーリを苦しめる罪が何かは知らなかったが、生きるためには愛が必要であり、ユーリを愛と幸福のもとに生かしたいと思ったのだ。ユーリは、自分を取り巻く多くの愛と幸福、そして自分を見守っていた周囲の人々に気付く。

神はどんな人をも愛し、許していることを知ったユーリは、神父となるために神学校への転校を願い出、ギムナジウムを出る。