懸命な少年たちの姿を描き出している人情物
時代物で、7つの短編が収録されている。
「車引き」は、半年ほど前までは裕福だった長吉は一家離散の憂き目に遭い、人力車を引いて何とか自分の身一つを餓えさせない暮らしをしていた。しかし、許嫁だった医者の娘の深雪とは、もう夫婦になれるような身分ではなくなってしまった。
目標もなく、ただその日その日を車を引いては駄賃を稼ぐだけの日々。数年先の見通しすらなくなった長吉に、車引き仲間ののっぽや深雪が一条の光を与えはじめてくれる。
「どろん」は、瓦工場で働く元スリの少年ドジ吉と、親方とその娘お花の物語。
人手の足りない瓦工場では囚人を働かせていた。その囚人の一人に、ドジ吉のスリ時代の親分の姿があった。いつか、自分の過去を暴かれるのではないかとおびえながら働くドジ吉。
何も知らずドジ吉を兄のように慕うお花。ドジ吉の過去を薄々知っていながらまっとうな道に戻してやりたいとかばう工場の親方。
どの作品も、どうにもならないような苦しいすさんだ暮らしをしている少年少女たちが、周囲の人たちの助けられながら、そしてその温かい心に触れた時、地に足をつけてちゃんと生きよう、大切な人たちのその愛情にに恥ずかしくないように生きようとする姿が胸を打つ。