『黒い兄弟』酒寄進一訳 上下 あすなろ書房
『黒い兄弟』(独: Die Schwarzen Brüder)はドイツ出身でナチス時代にスイスに亡命したリザ・テツナー(Lisa Tetzner)の著作名、またそこに登場する煙突掃除夫の少年達の結社名。19世紀のスイス・イタリアを舞台に少年売買や少年労働の苛酷さを描く。
主人公ジョルジョは、スイスのソノーニョ村から貧しさのため煙突掃除夫としてミラノに売られる。そこで出会った仲間の煙突掃除夫達と同盟「黒い兄弟」を結成し、困難を乗り越えていく。「ロミオの青い空」というタイトルでアニメ化もされたが、こちらは小説とは大きく内容が異なっており、あくまでこの小説をベースにしたオリジナル作品となっている。
ヨーロッパは一九三九年から一九四五年まで第二次世界大戦の渦中にありそのなかでスイスは独立中立を保ちつづけた。
この本を書いたテツナーは一八九四年、ドイツで生まれ、昔話の語り手として知られていた人だが、一九三三年、ドイツがヒトラー率いるナチスの独裁国家になり、自由と平和を望む人々がつぎつぎと弾圧されていった時代に、勇気をもってナチスに抵抗し、家も財産も失ってスイスに亡命した。そのとき、志を同じくする友の友情がなかったら、明日の生活にも事欠く状況だったという。
友情に支えられ、勇気と信念をもってつづけた亡命生活、その約八年にわたる苦しい体験から生まれたのが、この『黒い兄弟』である。